ドラムを叩いている人はみんな潜在的なベスト・ドラマーだ。
たった1つのリズムしか叩けなくても、観客がそれに合わせて踊っているんだったら、それはいいドラマーだ。
習ってもいない初心者ドラマーというのは、傍から見ても右も左も分からないといった感じがうかがえる。まあ当然であろう。そんな彼らにとって最も恐ろしい試練・障害はずばり不安である。不安はある意味、ウィルスのようなものだと言えよう。不安が1ミリでも体に侵食したドラマーは本番で1度でもミスをするとアウトである。熱く激しいライブだとドラムのミスさえ客には気づかれないものだが、そんなちょっとしたミスが原因でじわじわくずれてゆき、最後はボロボロになりかねない。曲が一瞬ずれたとか、スティックを落としたとかから始まって最終的には曲が途中で止まってしまったり。本番の後、舞台裏でバンドは暗い雰囲気に浸り、誰もが口々に「オレがミスしたんだ」と言い出し、収拾がつかない状態に。(もちろん一番悪いのはドラム)
一方、不安を一片も持たない(持っているいとまがない)ドラマーはどんな重大なミスをしても少しも躊躇せずカヴァーしようとする。結果的にそのライブは大成功で終わるのだ。メンバーはドラムがミスったことなど頭にない。「えっ?ごめんって何が?ミスしたの?気づかなかったけど・・・」で終わる。ライブ成功というプラスイメージがドラムのちょっとしたミス(重大なミス)をかき消してしまうのだ。
この二者は2人ともおれである。今からでも遅くない、心は十代という方も前半は前者のようでいいからそのうち後者へとなるようにがんばりたい(と、言いながら実は自分に言い聞かせている罠)
では不安の要素とは何か?答えは2つ!劣等感と余計なプライドだ。
1.練習不足故の劣等感。
原因としてありがちだが、克服する上でも手ごろなポイント。
ここはやはり、実際に練習不足でも、本番ではそんなことは微塵も気にしないぐらいがいい。実は練習不足なんて言い出したらキリがなかったりする。楽譜どおりにやることが到達点とは思えないし、リラックスした状態でプレイするためにも開き直るくらいがいい。とにかく気にしない。ミスも自分が悪いと思わない。ただやっぱり終わったところで「おれはまだまだだな」とか少しも思わないのは問題アリかも(笑)
2.根拠のない劣等感。
自分は何も分からないと思い込んでいること。これが一番自然に起こりやすい。
何も分からなくて当たり前。知ったかぶりから始まる、それがドラムだ(ぇ
なのにドラムセットやギャラリーをいざ目の前にして、おれってこんなんでいいのだろうか?だめなんじゃないか?みたいな発想が急に頭をよぎる。今更何をって感じだが。
3.ライバルに対する劣等感。
向こうのバンドはドラムが自分と同じ初心者なのにもう2曲ぐらいできるようになっている。うちはまだ1曲も・・・。ライバルがもてはやされている状態。なおかつ、自分のバンドのメンバーからは冷たい視線を感じてならない。そうでなくてもたまたまうまくいかなかったことが続くと自己嫌悪になる。メンバーには申し訳ない気持ちでいっぱいで、自信もプライドも持てないのだ。
ライバルから刺激を受けて成長につなげられる体質だと苦労はないのだが。
4.余計なプライド
上の3つとはカテゴリが変わるが、逆に自分が誉められている・うまいと言われている状況が自分にマイナスに働くことがあるということが最近分かった。
上手いプレイができるという周囲の前提が自分に対してプレッシャーに、つまり不安要素へと変わるパターンだ。自分はもともと期待されている人間なんだから期待以上のものを見せなければならないという気持ちが本来の実力に無理を言わせかねないものだったりする。結果、不安・緊張は無意識的に生まれる。普段やっていないようなことを本番でやれる時はよっぽど調子のいい時でしかないし、そういう時というのは上に述べたような感情は生じないものだ。
主にギャラリーに対して生じる感情なので本番直前になって起こりやすい。一般的にはこの手のプレッシャーってプラスに働くものなんだろうけどねぇ。どうもおれにはダメらしい。
以上、おれの今までの経験による未熟な分析だが、具体的に述べてみたつもり。他にもパターンは存在するかもしれない。これはどれもおれ自身やおれの周りで起こったことだ。特に3みたいなのは、ドラマーがドラムをやめてしまうことにも繋がりかねない。
こうしてみてみるとキッズにこれだけの障害に耐えうる精神を要求するのは酷な気がする。やはりそういった部分を補うにはバンドのメンバーの応援が最も大事だと思う。(マジで)
まぁここでは個人の問題に焦点を当てているので深く触れないけど。
バンドキッズにミスはつき物だ。おれも本番でミスったことは何度もあるし、その度に落ち込んだりうまく補って乗り越えたりもした。初めての舞台(高1)では、あまりの下手さにやってていやでいやでしょうがなかった覚えがある。
でも失敗の度に変わっていったつもりだ。本番でスティックを落としてからはスティックパウダー買ったりしたし(対策)、その時のショックからか、気持ち的にも変わったと思う(集中力)。あれから1年くらいして一度本番でスティックを落としたことがあったが、とっさにスペアのスティックに変えて一大事にカスりもしなかったこともあった。
いきなりペダルの部品(叩く棒)が外れてバスドラが踏めなくなり、その勢いでドラミングが崩れていったこともあった。それからは学校に置いてあるのを使うのはやめて自分でペダルを用意するようにし、急に部品が外れないよう本番前日には入念なチェックをするよう心がけている。(対策)
曲が多すぎて全曲覚え切れなかったことがあり、それが災いして本番は最悪の結果になったこともあった。もうあんな失敗は二度とないだろうけど(集中力)
ドラマー個人に対して何が言いたいか分かっていただけただろうか?そう、
失敗・後悔を制してドラムを、リズムを制する。コレ。
要するに、うまくなりたいんだったらたくさん本番をこなして失敗しまくれと。誰だってもともと失敗なんてしたくないのに失敗しろなんて言うのはなんかアレだけど、おれみたいな凡人がうまくなるにはこれしかない。いっぱい失恋をすると心が丈夫になって女を口説くのも上手くなるが、振られた時のショックを和らげようとメールで告って失恋してばっかりのやつはいつまでたっても変わらなかったりする(めっちゃおれの偏見ですが)。必ずそうだって言ってるわけじゃないよ。まぁそういう話もあるぞと。そりゃあその人の感受性しだいでどんな状況でも人は成長はするだろうよ。まぁなるべく失敗しないでうまくなるのが結局一番いいわけだし(ダメじゃん)
でもおれが本当に一番言いたいのは、多少満足できる結果が出るまではやり続けて欲しい、ということなのだ。こんな下手糞なドラマーがなんでこんなにバンドを楽しいと思うか。ドラムが楽だと思うか。やっていれば気づくかもしれない。